労働基準監督署の調査とは?

労働基準監督署の調査とは?

現在、長時間労働や残業代未払いなどが話題となる中で、労働基準監督署の各種調査や労働基準監督官の活動に注目されています。労働基準監督署の調査の意義や役割、流れや各種準備する書類について正しく理解できるように解説して行きます。

■労働基準監督署の調査と他の行政調査との違い
労働基準監督署が担当する主な法律には、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法があります。これらの法律はもともと労働基準法から分かれて成立した物です。この3法は、憲法第25条1項に定める「健康で文化的な最低限度の生活」を労働者が営むために必要になる、賃金、就業時間、休息、安全衛生の最低基準を定めているものと言えます。また、この最低基準を守らない経営者(使用者)に対して罰則を定めてでも守らせようとして制定されていることに特徴があります。
このため、労働基準監督官は「司法捜査権」と「行政職員としての監督権限」を持っています。司法警察権に基づき捜査令状を請求し強制捜査することも出来ます。また、行政職員の監督権限として、事業場への立ち入り調査(臨検監督)をすることが出来ます。また、臨検監督を拒否した際の罰則も決まっています。
このように強制調査権限を持つことが、労働基準監督署調査の最大の特徴と言えます。

■労働基準監督署調査の種類について
主な調査種類としては「定期監督」「申告監督」「災害時監督」の3つに分かれます。
・定期監督とは
定期監督は、労働基準監督署がその年の監督計画に基づき、労働条件、安全衛生全般について調査するものです。労働基準監督官が事業場に立ち入り調査して実施する場合は、事前予告があるときとないときがあります。
他にも「集合監督」と呼ばれる複数の使用者を一斉に呼び出して行う方法があります。近年は効率的に複数の事業場を調査出来ることから、「集合監督」の実施が増えているようです。
・申告監督とは
労働者から労働基準法等各種法令違反の申告があった際に行われます。(労働基準法では第104条で規定されています。また、使用者はこの申告を行ったことにより労働者に、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないと決められています)
この場合も事前に調査予告がある場合と無い場合があります。申告した労働者名については、労働者本人の了承が無い限りは原則伝えない扱いがされています。また、指定された日時に労働基準監督署に呼び出されることもあります。
・災害時監督とは
一定以上の労働災害が発生した事業場に対して行われます。

■労働基準監督署調査の準備と当日の流れ
「集合監督」や呼出調査であれば、労働基準監督署からの通知書面で指定されたものを持参します。ここでは、代表的なものについて触れて行きます。
①出勤簿やタイムカード等勤怠状況がわかるもの
指定された期間分持参することとなりますが、最長2年分を求められる時もあります。
②賃金台帳
指定された期間分持参することとなりますが、最長2年分を求められる時もあります。
③労働者名簿
本来、労働基準法で決められた記載事項(氏名 、性別、生年月日、現住所、履歴(過去の学歴、経歴、職歴、雇入れ年月日、退職(死亡を含む)年月日とその事由)が記載されたものを準備する必要があります。
④労働基準法等で定められた各種協定や届出の控え
代表的なものとして36協定があげられます。
もし、上記のような書類が揃わなければ、調査当日までに作成するのが望ましいです。また、労働基準法等で定められた届出をしていなかった場合は、調査前に届け出るのが望ましいでしょう。(もっとも、届出遅れた事実はすぐわかりますので、今後は定められた期日までに届け出る旨の指導を受けることとなります)

当日の所要時間は、調査目的や企業規模にもよりますが、2時間から3時間程度で終了することが多いです。また、出席者は資料の内容を説明できる総務人事担当者が望ましいでしょう。事案によっては顧問や関与されている社会保険労務士の方が同席した方が良いかと思います。

■実際の調査内容について
各種の資料を見ながら労働基準法等違反が無いか確認して行くこととなります。例えば
①就業規則を作成しているか、過半数代表は適正に選出されているか、又、労働者に周知しているか。(就業規則の作成義務がある場合)
②就業規則が正しく運用されているか、実態にあっているか。
②労働基準法に定められた労働条件について書面で通知しているか。
③労働基準法等に基づく各種届出を行っているか
④労働基準法で定められた各種帳簿(出勤簿、賃金台帳、労働者名簿)等は作成されているか、また、事業場に備え付けられているか
⑤正しく割増賃金は支払われているか
⑥労働基準法違反が前提のシフト管理がなされていないか
⑦労働安全衛生法に基づく健康診断は実施されているか
があげられます。

■労働基準監督署の調査で労働基準法等違反が見つかったときは
調査の結果、労働基準法等違反が見つかった際は、会社には是正勧告書が交付されます。
また、法違反とは言えないまでも改善した方が良い事項がある場合は指導票が渡されます。是正勧告書には是正期日が記載されていて、その期日までに法違反を是正することを求められます。割増賃金の未払いが見つかった場合は、遡及して支払いを求められることが多いです。

■年間どのくらいの企業が調査を受けているか、また調査を受けやすい企業は?
平成24年に実際に定期監督が実施された事業者数は、約16万事業場です。その約7割の企業で、労働基準法違反が見つかっています。
(平成24年、定期監督実施事業場数134,295、違反事業数91,796、違反率68.4%
申告監督実施事業場数25,418、違反事業数91,796、違反率71.9%)

調査を受けやすい企業として一般的に言われているものは。
・36協定の特別条項の協定時間が長い企業。
・36協定や裁量労働制の協定等、毎年労働基準監督署に届出が必要な物が届出をされてない企業。
・労働基準法等の法改正があったのに、就業規則の変更届出が長期間されていない企業
・各労働局の行政運営方針にて最重点取り組みとされている業種
等があげられます。
原則として調査される企業として
・労働基準法等の法違反の申告が労働者よりなされた企業
となります。

■自主点検表とは、どのようなものなのか?
各労働基準監督署では長時間労働や安全衛生に関する自主的な取り組みや促すことや、その状況を把握するため、「長時間労働抑制の為の自主点検表」や「安全衛生管理自主点検表」等の自主点検表を送付して提出を促しています。
この自主点検表にて改善が必要とされた事項については、法違反の部分となりますので改善や是正に関しての取り組みが必要となります。
この提出については、労働基準監督署から督促を受けますがあくまでも協力依頼との取扱いになりますので、法的な回答義務はありません。ただし、各種臨検監督での法違反の指摘事項と重なりますので、放置は禁物と言えます。

■ まとめ
労働基準監督署の調査を受けると不安になりますが、法違反を是正し正しい人事労務管理を身に着けるチャンスとも言えます。是非、働き方改革協会の各種コンサルティングをご活用して正しい人事労務管理を行って下さい。