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新型コロナウィルスの影響対応として話題になっている、雇用調整助成金。名前を聞いたことがあるが実際にはどのような助成金なのか気になる方も多いかと思います。ハローワークで実際に支給申請審査に携わった元労働局職員が詳しく解説します。(4月18日最新情報に更新しました)

1.助成金の趣旨、目的は?
厚生労働省のホームページでは「景気の変動、産業構造の変化その他の経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に助成されます。」と概要が記載されています。細かくいいますと、労働基準法上の休業手当の支払義務が事業主に生じる場合に対象になります。単純に天災で工場の操業ができなくたった場合は本来対象外です。(事業主に休業手当の支払い義務が生じない)ただし、結果的に天災等によって事業活動に支障が生じた場合には対象になります。今までもリーマンショックや東日本大震災の時には多く活用されて、雇用の維持に役立ちました。

2.労働基準法上の休業手当(労働基準法第26条)とは
厚生労働省のホームページでは「使用者の責任で労働者を休業させた場合には、労働者の最低限の生活の保障を図るため、使用者は平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければなりません。したがって、「働いていないから給料を支払わないのは仕方ない」ということはなく、休みが会社の都合である以上、一定程度の給料を保障する必要があります」と記載されています。
では、平均賃金の計算方法を見ていきましょう
①原則的な計算方法
事由の発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で除した金額です。(労働基準法第12条)
②例外的な計算方法
賃金が日額や出来高給で決められ労働日数が少ない場合、総額を労働日数で除した6割に当たる額が高い場合はその額を適用(最低補償)
(計算例) 2月から休業開始、11月、12月、1月とも総支給月額30万円
90万円÷92日間(歴日数)=9,782円60銭(銭未満切り捨て)
9,782円60銭×60%=5,870円(銭未満切り上げ)
となります。
詳しい平均賃金の計算方法は下記神奈川労働局のホームページをご覧ください。
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/saiteichingin_chinginseido/heikinchi.html

3.雇用調整助成金で助成される金額は?
勘違いしやすいところですが、前記で記載した休業手当の金額の3分の2助成されるのではありません。前年度の賃金総額を使い全社員平均の平均賃金を出して計算式で算出します。(助成金支給申請時の書類は様式第5号(2)を使用します)
(計算例※先の記載社員一人だけいた場合です)
前年度賃金総額360万円、休業手当の支払い率所定労働分の賃金の60%、年間平均雇用保険被保険者数1人、年間所定労働日数240日の場合
(1)前年度1年間の雇用保険の保険料の算定基礎となる賃金総額 360万円
(2)前年度1年間の1箇月平均の雇用保険被保険者数 1人
(3)前年度の年間所定労働日数 240日
(4)平均賃金額 [(1)/((2)×(3)) 15,000円
(5)休業手当等の支払い率 60%
(6)基準賃金額[(4)×(5)]9,000円
(7)1人日当たり助成額単価[(6)×助成率( 中小企業2/3 ) 6,000円
(上記の(7)の助成額の最高額は基本手当日額の最高額までとなります(令和2年3月1日時点で基本手当日額の最高額は8,330円です))
※この助成率が4月1日から中小企業は4/5(解雇等が無い場合は9/10)に上がります。

先に計算した結果と比べると不思議なことに休業手当の金額を上回り助成されることとなります。これは、年間所定労働日数240日を計算に用いるためとなります。(後述する通り、平均賃金で休業手当を支給する場合は助成額が低く算出されます)
ただし、賃金の日割り計算をする際に、所定労働日数によらず、所定労働日数より大きな任意の日数や暦日数を用いる場合は、365日で計算することとなりますので、金額は少なくなります。
※休業手当を平均賃金で算出する場合は、歴日数(365日)を使います。よって、助成額が少なくなりますので注意してください。
また、全社員の賃金総額で見ますので、相対的に給与の低い社員を休ませると助成される割合が上がります。賃金総額は前年度の労働保険料申告書でご確認ください。

4.雇用調整助成金受給での注意点は
雇用調整助成金は落とし穴という部分がいくつかあります。列記していきます。
・休業対象者が残業した場合は、相殺されその分助成金の対象となる日数より減らされます。※この残業相殺が1月24日に遡及して停止されます。
・休業日に自主的に出社した社員を申請対象にしてはいけません。よく、ボランティアと称したたり、出張日に充てたり、健康診断実施日にしたりした日を申請する企業もありますが、不正な支給申請として処分されます。
・特例があるとき以外は事前の計画申請が必ず必要です。また、申請した計画に変更がある場合が必ず変更届が必要になります。ただし、休業予定者が実際に休業しなかった場合は不要になります。
※今回のコロナウィルスの関係では、計画申請が事後(6月30日)までも良いこととなりました。休業の始期も1月24日から対象になります。ただし、事後申請の場合は計画届を纏めて届け出ることとなります(事後特例の措置は1回限りです)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09852.html
・対象労働者には、解雇予定者、退職勧奨を行ったもの、退職願いを提出した人は含まれません。
・休業手当の支払率は100%でも問題ありません。平均賃金の60%以上であれば、事業主が自由に設定できます。先の計算式の(5)の額が上がるので助成金金額も上がります。
・賃金台帳には休業手当額の明記が原則必要です。ただし、休業手当の支給率が100%の場合は明記が不要と簡素化されました。
5.まとめ
今回の新型コロナウィルスの影響対応の特例により、雇用量要件(従業員が一定数以上増えていないこと)や生産量の比較が3か月平均から1か月平均に緩和等々、大幅に使いやすくなっています。厚生労働省のホームページで内容を随時確認しながら、助成金申請を進めて行きましょう!!
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

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