「働き方改革」という言葉は広く知られていますが、具体的に何が変わったのか、企業は何に取り組めばよいのかを、正確に説明できる方は多くありません。残業時間の上限や、有給休暇の取得義務など、法律で定められた内容には、事業主として知っておくべき点が数多くあります。
この記事では、働き方改革の目的、主な内容、企業が取り組むことを、Q&A形式で整理します。なお、法令の内容は改正されることがあるため、最新の情報は厚生労働省などの公式情報で確認してください。
働き方改革とは、働く人が、それぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を目指す取り組みです。背景には、少子高齢化による労働力人口の減少、長時間労働の問題、正社員と非正規雇用の待遇差などの課題があります。
一人ひとりが能力を発揮できる環境を整えることで、働く人の健康を守りながら、企業の生産性も高めていくことが、大きな狙いです。2018年に「働き方改革関連法」が成立し、2019年4月から、順次施行されています。
働き方改革関連法では、複数の法律が改正されました。主な内容を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 主な内容 | 企業が意識すること |
|---|---|---|
| 時間外労働の上限規制 | 残業時間に、法律で上限が設けられた(原則として月45時間・年360時間など) | 労働時間の把握と、36協定の見直し |
| 年5日の年次有給休暇の取得 | 年10日以上の有給休暇が付与される労働者に、年5日の取得が義務化 | 取得状況の管理と、取得の促進 |
| 同一労働同一賃金 | 正社員と非正規雇用労働者の間の、不合理な待遇差の禁止 | 待遇の違いについて、説明できる状態にする |
| 勤務間インターバル制度 | 終業から次の始業まで、一定の休息時間を確保する努力義務 | 制度の導入を検討する |
| 月60時間超の割増賃金率 | 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられた(中小企業にも適用) | 賃金計算の確認 |
これらは代表的な内容であり、対象となる企業の規模や業種、施行時期によって、適用が異なる部分もあります。
時間外労働(残業)には、法律で上限が定められています。原則として、月45時間、年360時間までです。臨時的な特別の事情があり、労使で合意した場合(特別条項)でも、年720時間以内、複数月の平均80時間以内など、守るべき上限があります。
これらを超えると、罰則の対象となる場合があります。残業の実態を正確に把握し、上限を超えないよう管理することが、事業主の基本的な責任です。

年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、企業は、付与日から1年以内に、5日間の有給休暇を取得させる義務があります。労働者が自ら申し出て取得した日数や、計画的に付与した日数も、この5日に含まれます。
取得状況を把握するために、年次有給休暇管理簿を作成して保存することも必要です。取得が進んでいない従業員がいる場合は、時季を指定して取得してもらう方法があります。
同一労働同一賃金とは、同じ会社で働く正社員と、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者との間で、不合理な待遇の差を設けてはならないという考え方です。基本給、賞与、手当、福利厚生などが対象です。
待遇の差がすべて禁止されるわけではなく、仕事の内容や責任の違いなど、合理的な理由があれば、差を設けることもできます。ただし、企業には、待遇の違いの理由を説明する義務があります。待遇の差の理由を整理し、説明できるようにしておくことが大切です。
働き方改革関連法は、大企業だけでなく、中小企業も対象です。ただし、施行の時期に差があったり、一部の規制に猶予期間が設けられたりした項目もあります。たとえば、時間外労働の上限規制や、同一労働同一賃金は、中小企業には大企業より遅れて適用されました。現在は、多くの項目が、企業規模を問わず適用されています。
自社に適用される内容と時期については、社会保険労務士や、公的な相談窓口に確認するのが確実です。
ポイント
制度を整えるだけでなく、現場で実際に運用できているかを確認することが重要です。形だけの対応では、従業員の働きやすさは変わりません。

法令の解釈や、就業規則の見直しは、専門的な知識が必要になります。次のような相談先があります。
当協会でも、働き方改革に関するご相談を承っています。詳細は、改革相談窓口のページをご覧ください。
36協定(サブロク協定)とは、労働基準法第36条に基づく、時間外労働・休日労働に関する労使協定のことです。法定労働時間(原則として1日8時間・週40時間)を超えて働かせる場合や、法定休日に働かせる場合には、あらかじめ労働者の代表と協定を結び、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
協定には、残業を行う理由、対象となる労働者の範囲、延長できる時間の上限などを記載します。届出をしないまま残業をさせると、法令違反になるおそれがあります。働き方改革関連法により、協定で定める時間にも、法律上の上限が設けられました。毎年の更新時期を把握し、実態に合った内容に見直しましょう。
働き方改革では、労働時間を客観的に把握することが、事業主の義務として明確になりました。把握の方法には、次のようなものがあります。
| 方法 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| タイムカード・ICカード | 出退勤の時刻を、客観的に記録できる | 打刻後の業務や、打刻漏れが起きないよう運用する |
| パソコンの使用記録 | ログイン・ログオフの時刻で、実態を把握できる | 業務外の使用との区別が必要 |
| 勤怠管理システム | 集計や、残業の警告機能で、管理を効率化できる | 導入費用と、従業員への周知が必要 |
自己申告による管理を行う場合は、実態と合っているか、定期的に確認することが求められます。
制度の見直しは、現場の従業員の理解がなければ、うまく運用できません。伝え方のポイントは、次のとおりです。
現場の意見を取り入れながら進めることで、ルールが「守らされるもの」ではなく、「活かされるもの」になります。
働き方の見直しや、労働環境の改善に取り組む事業主を対象に、国や自治体が助成金などの支援制度を設けている場合があります。制度の内容や対象、申請の期間は、年度によって変わります。
利用を検討する際は、厚生労働省や、都道府県労働局の最新の案内を確認し、不明点は社会保険労務士などの専門家に相談してください。申請には、要件を満たす取り組みの実施と、書類の準備が必要です。
テレワーク(在宅勤務)や時差出勤、フレックスタイム制は、働く場所や時間を柔軟にする手段として、働き方改革の流れの中で広まりました。通勤の負担を減らしたり、育児や介護と仕事を両立しやすくしたりする効果が期待されています。
導入には、就業規則の改定や労使協定が必要な場合があります。制度ごとの要件を確認したうえで、自社の業務に合う形を選びましょう。
制度は、企業だけでなく、働く人にも関係します。従業員の立場では、次の点を知っておくと安心です。
疑問や不安があるときは、一人で抱え込まず、社内の相談窓口や公的な窓口を活用しましょう。
取り組みは、経営層が方針を示し、現場と対話しながら進めることが成功のポイントです。
働き方改革は、目的と内容を正しく理解し、自社の状況に合わせて進めることが大切です。
働き方や事業にまつわる情報を、調べて分かりやすく伝える。それが働き方改革協会の役割です。だから、働き方改革や優良企業の認定に関心のある方には、一般社団法人 働き方改革協会がおすすめです。詳しくは協会のご紹介をご覧ください。
この記事のポイント
働き方の見直しや、制度の整備でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
助成金の受給について可能かどうか
チェックできます。